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忍び寄る悪意、また会う日まで『悪い本』宮部みゆき

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堂々とプレゼントするタイプの本ではないが…

まずこの本は、図書館や書店の華やかで優しい「おすすめ本コーナー」とかに並ぶことはおそらくないし、知人や親族から子供のプレゼントでもらうこともない本だと思います。自分も出会ったのは偶然です。怖い絵本コーナーにありましたので、基本的に怖い絵本が好きな子だけが手にできるものだと思うんです。

絵もかなり恐ろしく、わりとトラウマ本となっております。ですが、子供の頃だからこそ読んで欲しい本でもあるという一面があります。

あらすじ

「はじめまして、わたしは悪い本です。」から始まる、不思議な本との対話です。

この本はとても悪い本ですが、それでも皆、この本のことを知りたがり、仲良くなりたがるのです。

感想

文章もそうですが、先述のとおり何しろ絵がめちゃくちゃ怖いトラウマ絵本です。大人が見ても正直、怖いくらいです。怖いお化けが出てくる~とかじゃなくて、おもちゃが怖いお化けになっちゃっているんですよね。それがなおさらに恐怖を肌に感じます。

内容としては、一貫してこの「悪い本」が語り掛けてくる本なのですが、悪い本というのは以下のような本だそうです。

・世の中の悪いことを一番よく知っている。
・子供はいつかこの本と仲良くなりたがる。
・子供が誰かを憎んだ時、この世の中で一番悪いことを教えてくれる。

怖いことを教えてくれる本というのはたくさんありますが、大抵は「こういうことをするといけないぞ」とか、「こういうことをしたらこうなるぞ」みたいな勧善懲悪的な本だと思うんです。しかしこの絵本は違います。自分はこの世の悪を知っていると名乗った上で、こう言います。

「あなたは悪い本なんかいらないって思ったでしょう、でもそれはまちがい」

いつか人は必ず誰かを嫌い、憎むのです。どんなに純粋な子供であったとしても、それは避けられません(というか、他者を嫌って拒絶するという防衛本能が搭載されていないと逆に人間社会で生きていく上でまずいです)。そしてその時に、人はこの本と友達になりたがるらしいです。

自分が特に怖いと思ったのは、「一番悪いこと」とは何なのか、具体的に一切書かれていないことです。一番悪いことを知っていて、一番悪いことを教えてくれるのに、それが何かを教えてくれない。だからこの本は、怖いんです。

最後に本は、また会いましょうのメッセージを送ってくれます。
絶対的に、人という生き物は誰かを憎みます。だからまた、この本と会うのです。

個人的には読み聞かせるよりも、こっそり子供の絵本棚とかに入れておきたい本だなと思いました。一人でこの本に出会って、そして色々考えて欲しい(でもそんなことしたら子供がトラウマ抱えそうではありますが…!)。幼少期の自分のようにファンタステックなヤバイ現象が起きても何にも思わないタイプの子供でないと、ちょっとかわいそうかもしれません。

でも多分、大抵の子はこの本に恐怖を覚えて、友達になりたくないと思うんじゃないかな…何か知らんけど「一番悪いこと」と言われると、思いつく限りの「一番悪いこと」を意識して、それをできるだけしないようにするかもしれないし、誰かを実際憎んだ時にこの絵本の言いようのないおぞましさを思い出して、自分がしようとしている悪いことの恐ろしさを感じ取るのかもしれません。

誰しも必ず他者を憎む。それは当たり前のことですが、誰かを憎んでる時って大抵自分のこと正義の味方だと思ってますからね、人間は。そんな時、怒りの中でふとこの本の恐怖を思い出すことができれば、少し冷静になることもあるのかもしれません。

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