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『天使にラブ・ソングを…』感想レビュー!信仰心ゼロのクラブシンガーが敬虔な修道院に紛れ込んだ結果

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映画情報

邦題:天使にラブ・ソングを…
原題:Sister Act
公開年及び国:アメリカ(1992年)
上映時間:100分
監督:エミール・アルドリーノ

<キャスト>
デロリス・ヴァン・カルティエ(主人公):ウーピー・ゴールドバーグ
ヴィンス・ラ・ロッカ(ギャングのボス):ハーヴェイ・カイテル
修道院長(修道院長):マギー・スミス
メアリー・ロバート(若いシスター):ウェンディ・マッケナ
メアリー・パトリック(大柄で陽気なシスター):キャシー・ナジミー
メアリー・ラザラス(年長のシスター):メアリー・ウィックス
エディー・サウザー(刑事):ビル・ナン
オハラ司教(司教):ジョゼフ・メイハー
聖ヨハネ・パウロ2世(法王):ジーン・グレイタック

<概要>
デロリスはギャング経営のカジノで歌うクラブシンガー。しかしある日ギャングのボスが部下を始末したところに遭遇、目撃者として命を狙われてしまう。何とか逃げ出したものの、派手で奔放なデロリスとは対称的な、敬虔で厳格な修道院にシスターとして身を隠すことになってしまうのであった…

こんな人にはおすすめ!&おすすめしない!

<こんな人におすすめ>
・ハッピーエンドが好き
・ギャップもののコメディが好き
・ミュージカルが好き
・音楽が素敵な映画が好き
・成功物語が好き

<こんな人にはおすすめしない>
・吹き替えの評判が悪い映画は嫌
・ストーリーが凝っていて欲しい
・昔の映画の演出技術の低さが苦手
・ベタな話は好きじゃない

評価

【個人的な評価】

ストーリー ★★★★☆☆☆☆☆☆

画面映え  ★★★★★★★★★☆

ユニーク  ★★★★★★★★☆☆

派手なシンガーが修道院という異質な場所に入り込んでしまうギャップ、そして逆に敬虔なシスターが世俗っぽいことに触れるという面白味も楽しめます。しかしこの映画の看板とも言うべきは素敵なアレンジ聖歌。過去に観たことがある映画でしたが、これを聴くために何回も見てしまいます。ただ、ストーリーは安直なのであんまり身構えず気楽に観るのがおすすめ。

【ネットなどでのおおよその評判】

歌が聞きたくて繰り返し観てしまう
陽気なシスター達に元気がもらえ


新吹き替えが微妙
ストーリーが浅い

などの意見がありますが、昔から評判の高いコメディ映画です。ストーリーよりは雰囲気と音楽を気軽に楽しんで観るのがいいかもしれませんね。

あらすじ

ド派手なクラブシンガーのデロリスは才覚を持ちながらも歌手として成功できず、ギャングのボスの愛人をする日々を過ごしていました。しかしボスが部下を殺したところを目撃、追われて警察に駆け込むことになります。

ボスを訴訟するまでの2ケ月間、デロリスは「ここ絶対安全!」と刑事お墨付きの場所に隠れることになるのですが、その場所はなんと、奔放に物欲的に生きてきたデロリスとは真逆の「清貧・従順・貞潔」がモットーの閉鎖的な修道院でした。さらに、無理矢理入れられた聖歌隊の歌は聞くに堪えないものだったのです。

しかし生来音楽が大好きなデロリスは見事な手腕で聖歌隊を立て直し、院長から批判されながらもリズミカルで楽しい聖歌を披露します。これがきっかけで修道院は近隣住民から支持を受けるようになり、デロリスはシスターとしての活動に楽しみを見出しました。

閉鎖しかけだった修道院はみるみる活気を取り戻し、シスター達も近隣住民も笑顔溢れる全員ハッピーな町になっていくのですが、その様子がテレビで放映されてしまいます。

そして遂に、ギャングのボスにデロリスの居場所が割れてしまうのです…!

見どころ① 個性的なシスター達

たくさんの個性的なシスターが登場し目移りしてしまう映画ですが、中でもデロリスと仲良し4人組を結成し、夜中にアイスを隠れ食う仲である3人のシスター達は特に印象深い存在です。

メアリー・ロバート

最も若いシスターで、他のシスター達とは頭のベールの形が違うのですぐに覚えられます。自分に自信がない内気な性格で少しトロいことを気にしていますが、奉仕を天職だと思っており、何か使命を為したいという強い意欲を燃やす存在でもあります。

歌声も小さく声の出し方も分からなかった彼女ですが、聖歌隊の立て直しと共に成長。ミュージカル部分やソロパートを担当するまでになり、最終局面では大胆な行動を提案するにまで至ります。

何かしたい、でも自分の思うようになかなかうまくいかない、という思いは誰しもが持っているものなので、ロバートはとても共感できる存在です。彼女の成長の幅が最も大きく、見ていて何だか嬉しい気持ちになります。

メアリー・パトリック

最も騒々しいシスターで、ふくよかな体型と底抜けに明るい陽気な性格はかなり印象に残りやすいと思います。実は結構面倒見がよく、来たばかりのデロリスにとても親切にしてくれた人です。

踊ったり歌ったりのアクションも多く、たまに空気が読めていませんがとても楽しいお姉さんですね。担当はソプラノで、よく通る声は合唱の中でも目立ちます。

シスター達の中でも段違いに明るく、コメディでもあるこの映画においてムード―メーカー的な大事な役割を果たしていますが、一方で「悩める人々に尽くしたい」という奉仕の精神を強く持ったシスターでもあります。

メアリー・ラザラス

年配ですがなかなかに味のある面白いシスターでして、実は個人的な一押しです。修道院のシスターのメンツは年配の方が多く、若いロバートやパトリックは覚えているよ!という人が多いのですが、ラザラスを覚えている人ってあんまりいないんですよね…

ラザラスは元々ガチガチの厳格なシスターです。最初の頃は「私が昔いた修道院なんかもっと厳しくて…」なんて言ってきます。そして、初期のだめだめだった頃の聖歌隊の指揮者でもあったのです!

当時のラザラスの采配は皆あまり支持しておらず、結果デロリスにその座を奪われることになったのですが、それでもデロリスを否定したりせず能力を認めて、なんと仲良し4人組にまでなりました。

年配の厳格キャラだったにも関わらず、すごく柔軟で適応能力が高い人なんです。

さらには夜中に皆でアイスを隠れ食いしたり、ヘリの運転手を脅したりするときの台詞がすごく俗っぽかったり、終盤のカジノでボスと対峙した時には爆笑のお茶目な一面が現れるシーンも。

そういえば「メアリー」は聖女マリアを表す意味で全てのシスターについている名前なのですが、その後ろの名前については皆何故か男性名なんですよね。デロリスの「クラレンス」とか、「ロバート」「パトリック」とかも男性名なんです。調べたんですが理由不明でしたね。なんでだろう…

見どころ② 思わず口ずさみたくなる、アレンジ聖歌

この映画ではアレンジ聖歌が3曲入っています。(曲名は映画のサントラの曲名を記載しております。)
因みにこの3曲、実は冒頭で聖歌になる前の曲が流れているのをご存じでしょうか。全部観た後にDVD巻き戻して冒頭のクラブで歌うシーン見ると一発で分かりますよ!

ここでは劇中でアレンジされる前の原曲の方をご紹介します。事前に原曲を知っているともっと楽しめると思います!

聖歌隊リニューアル後の、一番最初の曲「Hail Holy Queen」

これはSalve Reginaという聖歌をヴェガス風にアレンジした曲です。歌詞はいじられていないタイプのアレンジです。原曲なのですが、動画サイトなどで検索をかけると別のSalve Reginaが結構引っかかってしまうので、Hail Holy Queenで検索をかけるのがおすすめ。

マグダラのマリアがテーマ「My Guy(My God)」

これはメアリー・ウェルズ(Mary Wells)のMy Guyを聖歌風にアレンジした曲です。内容としては「何があってもあの人に絶対ずっと付いて行くんだから!」という感じのラブソングなのですが、「あの人」を現す「Guy」を「God」に変えることで、「あのお方(神)にずっと付いて行きます」という信心深い歌詞になるのです!

因みに冒頭あたりの歌詞では「can」が「could」に変わってるところがありますが、これはマグダラのマリアとキリストとの邂逅が過去のことだからだと思います。

法王の前で歌った「Finale:I Will Follow Him[“Chariot”]

これはペギー・マーチ(Peggy March)のI Will Follow Himを聖歌風にアレンジした曲です。内容としては「どんな障害があろうと彼にずっと付いて行くわ!」という感じのラブソングなのですが、「he」を「He」に変え、神であるキリストであると設定することで「何があろうとも神に付いて行きます!」という信仰心のある歌詞になるのです!

あと、原曲から取り入れてない歌詞もありまして、
Ever since he touched my hand I knew
That near him I always must be
というところなのですが、意味としては「彼が私の手に触れてからずっと、私はいつも彼の傍にいるべきってわかったの」みたいな感じです。

「彼」は神のことですから、手が触れてからというラブソング的な要素が取り除かれたんだと思います。

因みにソロパートで活躍するメアリー・ロバートの歌は実は吹き替えが入っております。つまり、口パクなのです。歌はアンドレア・ロビンソンが歌っていますよ。

見どころ③ シスターが大暴れする、コミカルな展開

この映画の見どころと言えば歌ですが、やはり特筆すべきはシスターという非日常的な存在が大活躍するコメディであるということでしょう。映画じゃないと絶対観れない、現実ではありえないシーンは必見です。

バーに遊びに行くシスター

序盤、清貧生活に耐えられなくなったデロリスは夜中に抜けだしてバーに遊びに行きます。ところが、それをシスターに追跡されてしまいます。なんと本物のシスターがバーに入り込んでしまったわけですね。でもこのシーン、実は不良のはずのデロリスがシスターを抑止しようとするんです。この映画はシスターが世俗の楽しみを教えられて染まったという展開ではないと示しているところが良いです。

シスターのしたたかさ

困っている町の人々の助けになるよう奉仕活動をするシスター達ですが、実は優しいだけではありません。ちょいちょいそういうシーンは出てくるのですが、顕著なのは終盤においてデロリスを助けるためリノ行きのヘリを出してもらうシーン。シスターならではのほぼ脅しみたいな頼み方で足をゲットします。ここめちゃくちゃ面白いんですよね。ヘリの操縦士は可哀そうですが…

シスターがカジノに大量出現

この映画の中で屈指のコミカルシーンといえばここです。デロリスを助けるためギャングのカジノまでシスター達が追ってくるシーンですが、夜のネオン街をダッシュで20人くらいのシスターたちが横切るのは圧巻ですね!また、カジノに入り込んだシスター達に院長は「目立たないように(デロリスを)探すのです」という大真面目な指示を出すのですが、シスターがそんな場所うろついてるなんて目立つに決まっていますので、大変なことになります。

感想 ストーリーはベタなのに、何回も見てしまう魅力

実は昔に観たことがある映画でしてシスター大はしゃぎと素敵なアレンジ聖歌が子供心に印象に残っていました。「あの愉快な楽しい映画、もう一回観たいな」という思いで再び手に取る方も多いんじゃないかと思います。

しかし、久しぶりに観ると「こんな話だったっけ」という印象を受けました。大人になったせいだと思うのですが、特にデロリスと院長の印象ががらっと変わりましたね。

割とストーリーがベタではあるので、そのあたりを不満に思うレビューなんかが結構あったりするんですが、デロリスと院長はなかなかいいキャラしていると思います。

【デロリス】ただのド派手歌手ではないデロリスの魅力

実は嫌い合っていた院長と凄まじいバトルをしたわけではありません。デロリスはどんな嫌な相手も一回ヘリ下って尊敬していると発言します。普段ちょっとお下品で攻撃的な言動を見せるのにそういった処世術を心得ているところが、描かれてはいない過去の苦労を感じさせます。

また、信仰とは無縁のようなデロリスですがそうでもないところもあります。聖歌隊に対して言った「歌の歌詞を考えて、喜びと共に歌って」というのは、どのジャンルの歌でもいえること。デロリスと信仰は実はマッチするところがあったんですね。

さらに修道院がうまくいったきっかけの一つは、デロリスが治安の悪い町に住む人々にも神を信じる心があるのを知っていたからではないかと思います。一番分かりやすく表れているのは、なんとボス一味です。ギャングですら信仰心の影響受けてるんです。カジノの客なんかもシスターの影響めっちゃ受けてましたし。

人の心に根ざした信仰心を看破していたデロリスだからこそ、修道院や町を良い方向に導くことができたのかもしれません。

【院長】ただの伝統主義ではない院長の魅力

伝統と厳格の象徴的存在であり、デロリスと対比的に描かれる院長ですが、ただのお堅い憎まれ役ではない、非常に人間的な一面を見せます。

まず、外の世界を全く知らないわけではない俗っぽさがあるんです。隣人たちは決して善人ではないと知っているし、昔と違って聖職者という理由だけで敬ってもらえる世の中ではないと分かっています。

故にシスター達には閉鎖的な暮らしをするよう説きます。ですが、修道院を経営する以上、世俗と全く関わらないというわけにはいきません。寄付金をもらえると知ってあっさりデロリスを受け入れたりするところは最もわかりやすいところだと思います。

また、修道院に飽き飽きしていたデロリスに対し、己の内省をするように促すシーンがあります。その際、聖職者じみた決まり文句の声掛けではなく、かなり具体的にはっきりとした毒舌でデロリスの今までを批判するのです。

そんな院長ですが、みんなを盛り上げて勝手に地域交流までしてしまうデロリスの手腕には一目を置いていました。しかし一方で、今はうまくいっている地域交流がいつかつまづいた時に自分では皆を失望させると思いつめるのです。

一方的に厳しく保守的な悪役タイプの保守派として完成されているのではなく、葛藤もあり、そして新たな自分を見つけることができるもう一人のヒロインといってもいいのではないかと思うのです。

全体としてストーリーが単純明快だというのは否めません。ですが、「ストーリーがベタだから深い感銘は受けない」という評価を抱えているにも関わらず、おもしろおかしい非日常な設定や個性的なシスターたち、知名度も高い素敵な歌により「何度でも観たい!」と思わせるのは素晴らしい映画なんじゃないかな、と思います。

コラム

以下では鑑賞中に気になったちょっとしたネタなどをご紹介しています。

法王役の●●、実は有名な「法王様」である

この映画で法王役を演じるジーン・グレイタックですが…実は教皇ヨハネ・パウロ二世に激似なのです。あまりにも似すぎているため、ご本人が登場していたと思っている方もいたようですね。なお、ご本人はカトリック教徒であり、ロサンゼルスの大司教区には教皇役を演じてもいいかちゃんと許可を取っていたそうです。

彼は以下の映画にて法王として出演していたようです。他にも、テレビのシリーズなんかにも法王として登場していました。


『裸の十字架を持つ男』
『ホット・ショット』
『裸の銃を持つ男』
『ラスト・チャンスをあなたに』

出演はコメディが中心みたいです。実はもともと俳優が本職ではないので、法王が主人公となる映画に出演はしていないようです。

2022年、「天使にラブ・ソングを…」舞台があります!

実は2022年、11月13日から舞台が決定しています!

ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』公式サイト
圧倒的なご要望にお応えいたしまして、新キャストを迎えて早くも始動!!ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』2023年11月5日~29日東急シアターオーブにて上演!!

なんとデロリス役のウーピーがプロデューサーとのことで期待が高まりますね。最初は2009年にロンドンでスタートした舞台ですが2014年に日本初上陸、そして2016年、2019年と再再演に至り、2022年にもまた上演されるのです!配役は以下のとおり。

デロリス:森公美子、朝夏まなと
エディ(刑事):石井一孝
カーティス(ボス):大澄賢也、吉野圭吾
ギャングの子分:泉見洋平、KENTARO、木内健人
院長:鳳蘭
メアリー・ラザラス:春風ひとみ
メアリー・パトリック:谷口ゆうな
メアリー・ロバート:真彩希帆
オハラ神父:太川陽介

音楽はアラン・メンケン(リトル・マーメイド、アラジン、塔の上のラプンツェル、美女と野獣、ノートルダムの鐘、ポカホンタス等々で有名な映画音楽作曲家)です!

「天使にラブ・ソングを…」は続編あり!

映画は勿論のこと、舞台も音楽も大人気となった『天使にラブ・ソングを…』はご存じの方も多いと思いますが、2があります。

しかし、どうやら3が出るのではないかという噂があります!監督はTV『ハイルクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』のクリエイターであるティム・フェデリー、制作はなんとウォルト・ディズニー・ピクチャーズ他。しかも主演はウーピーだそうです!

ただ、詳細はまだ不明とのこと。どのような映画なのか、楽しみですね!

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