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『すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』感想レビュー! その頑張りは、誰のため…?

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<映画情報>
邦題:すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ
原題:すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ
公開年及び国:日本(2023年)
上映時間:70分
監督:作田ハズム

<キャスト>
ナレーション:本上まなみ

<概要>
すみっこで過ごすことが好きな「すみっコ」たちは、ある日森の中で不思議なおもちゃ工場を発見する。経営者のくま工場長に誘われて、楽しくおもちゃ作りに参加するすみっコたち。

しかし、次第にくま工場長や工場の様子がおかしくなってしまい…

映画すみっコぐらしシリーズの第3弾。

<こんな人におすすめ>
・すみっコぐらしが好き
・ほっこりするアニメが観たい
・たくさんキャラクターが登場するアニメが好き
・社会問題を訴える作品が好き

<こんな人にはおすすめしない>
・ナレーションしかないアニメは苦手
・子供向けアニメに興味がない
・いっぱいキャラクターが出てくるのは苦手
・すみっコの優しい世界を楽しみたい。

【個人的な評価】

ストーリー ★★☆☆☆☆☆☆☆

画面映え  ★★★★★☆☆☆☆

ユニーク  ★★★☆☆☆☆☆☆

毎度「大人でも感動する!」と話題になるすみっコの映画ですが、正直今作は大人に寄せすぎた感が否めません。子供に受け取って欲しいテーマは読み取れますが、その扱いが雑である気がしますし、一部のキャラクターはすみっコの世界に入れるべき存在なのかという疑問も。

【ネットなどでのおおよその評判】
日常にリンクしやすく大人でも泣ける
大人でもハラハラする展開がある
切ない心情を持った敵キャラがいい
子供に対してのメッセージが良かった!

ナレーションが減って空気感が悪くなった
現実味のある社会風刺が世界観に合わない
エンディング曲が合ってない
子供が怯えるようなシーンがある

今回はストーリーがやや特殊であること、従来はなかったアクションシーンが入ったこと、ナレーターが減ったことなど、様々なイレギュラーが発生しました。賛否両論ですが、おおむね評判は良いです!

登場人物は前回同様、ねこ、とかげ、しろくま、ぺんぎん、とんかつ、えびフライのしっぽが登場しますが、メインはしろくまのようです(前回はとかげでした)。

しろくまの実家からとある思い出のぬいぐるみが届くところから物語は始まります。紛失したぬいぐるみのボタンを探して入り込んだ森の中で、みんなはおもちゃ工場を発見しました。

そこの経営者であるくま工場長にスカウトされ、すみっコのみんなはおもちゃ作りを手伝うことになります。分業して、効率化して、新商品を企画して。みんなで楽しくおもちゃを作っていたのですが、次第に工場の様子がおかしくなり始めるのです…

すみっコぐらしの映画というと、「子供向けだけど大人でも泣ける!楽しめる!」とよく言われますね。今回の映画は第3弾ということですが、実は今までのほのぼの癒し系映画とは違うイレギュラーな箇所が少しあります。

その最たるものが、すみっコの労働です。

工場が舞台ということですみっコが労働することになるんですけれど、実はこの労働がごっこ遊びのお店屋さんとか、そういうほのぼのしたものではないんですよ。なんと後にブラック化するんです。

おもちゃ工作の序盤の風景は楽しそうですし、物作りというせっかく子供が興味を持ちそうな内容であるのに、それがブラック化するんですよ。かなり斬新な展開でして、簡潔に述べますとすみっコがやりがい搾取されて疲弊します。

まずすみっコの世界の経済についてなんですが、前作ですみっしーの湖の近くの売店でものを売っていた(値札のついた商品が出てきた)こともありますし、公式の動画でも「お買い物」という単語が出ますのでアンパンマンとは違って貨幣経済があるようです。

では、皆は普段どうやって生きているのかというと、森とか川とかで採取・狩猟したものを食っている描写がアニメか何かであったはずなので、物々交換とかで生きている可能性があります。とりあえず貨幣がある世界かつ皆が採取・狩猟で生きていると仮定しましょう。

だから貨幣の存在は知っていると思うんですけれど、すみっコたちは工場に対して「労働の対価」としてお金を求めないんですね。そもそも、すみっコって誰かに雇われたことないと思います。工場での労働は、あくまで「くまのお手伝い」なんです。つまり、「楽しいから働いていた」を利用するというやりがい搾取なんですが、工場での労働が過酷化していくにつれ、それが表面化していきます。

そしてこのすみっコが過酷な労働を強いられて疲れ果てるという描写自体が賛否両論なんですね。そんな現実的なものをすみっコのワールドに持ち込むことが世界観に合っていないという意見もあれば、大人でもすみっコの世界を身近に感じて感動したという声もあります。

もちろんそれもそこそこの問題なんですけれど、実はこの工場には不穏な怖さが隠れています。工場で働き出したすみっコたちは頑張りに応じてMVPになり、それが表で貼り出されます。で、このMVPっていうのが一部のすみっコはなかなか獲得できないんですね。すみっこはみんな同じ仲間で格差がないはずなのに、そこに数字という目に見える格差が生まれ始めるんです。

例えば、しろくまは器用ですがとかげはちょっと不器用です。それをとかげが気にしていたとしましょう。でもそこは「とかげには別の特技があるんだから」とカバーできますし、それは事実です。他人と同じ特技を持つ必要はありません。ところが、かが貼り付けたMVPという肩書はそうもいかないんです。

つまり「しろくまの方が優秀である」と他人の視点で一方的に一部の能力を比較され、勝ち負けを付けられているんです。いくらとかげが泳ぎが得意でも、それが評価基準にならないのでどうしようもないんです。MVPが取れるかどうかは、勝ち負けなんです。

しかもこのMVP推移一覧表について、映画の中で一切フォローが入らなかったんですよね。すみっコに落ち込んでいる暇がなかったといえばそうなんですけれど、小学生くらいの年齢であればさすがに気づくでしょう。解消されないモヤっとしたものが残るかもしれません。

ただ、こういった大人向けである演出については、大人が共感したり、感動したり、あるいは現代社会の風刺として感心したりしています。つまり、子供の頃には気づかなかったけれど、大人になって改めて見たら気づいた不穏さ…!という形で将来新鮮な発見を与えてくれる可能性があります。そういう意味ではおいしい演出と言えると思います。

今回の映画では、従来いなかったタイプのキャラクターが出てきます。結構びっくりしたんですけれど初めて攻撃的なキャラが出てきましたね。もう言ってしまうんですけれど、「工場」というキャラが出ます。

最も分かりやすいのは工場がすみっコを追いかけてくるシーンです。迫ってくるアームや工場の巨体、それをかわすカーアクションや緊迫感のある音楽も、すみっコの映画では初めての要素です。

派手なアクションや知恵で脱出するというシーンは目新しいし、ドキドキハラハラは楽しめる人も多いようなのですが、実は子供さんが小さいと怯えてしまうということもあるようです。また、すみっコの本来の世界観を大事にしているタイプのファンですと否定的なこともあるみたいですね。

これは賛否両論だと思いますが、実は自分は否定的な方です。「すみっコのあの優しいのんびりした世界観を壊してほしくなかった…」と思いました。すみっコはたまに性格の悪いブラックタピオカみたいな奴もいますけれど、他者に暴力を振るうタイプのキャラって今までいないんですよ…!それが地味にショックでした。

不必要に詮索せずそっと寄り添う、というあの優しい世界に価値を感じているんですよね。すみっコぐらしはそもそも勧善懲悪ではないというちょっとめずらしい世界観をしています。かつ、個々の生き方やあり方を肯定するがゆえに必要以上に踏み込まない、相手の意思や個性を尊重した繊細な場所なんです。

だからあの世界に「捨てないで!」という強い自己主張と自己利益で他者の領域に踏み込み、暴力的な行動で迫るようなキャラがいるのがなんか嫌でした…すみっコは誰にでも優しい便利で慈善的な受け皿ではないでしょう。各々悩みや喜びがある個々人なんです。

ただ、昨今のアニメは映像の派手さや美しさが高い傾向にあります。すみっコも今後の方向性として派手で印象に残るような画面映えを意識しているのかもしれませんし、ドラえもんやクレしんのような悪と戦うストーリーを投入していきたいのかもしれません。確かにそれらはすみっコの世界観を壊しますが、もしかするとその中から名作が生まれる可能性もあります。

今回は個人的にはあんまり好きではなかったんですけれど、いつかそれがうまいこといい映画になるかもしれませんね!

この映画の感想をチラッと調べてみると、「現代社会の縮図」「社会の闇」みたいな話題を結構見かけると思うのですが、自分はそれに対してはあまり何も思いませんでした。なぜなら、工場が利益を上げているシーンを見かけなかったからです。

おもちゃの供給先である町の住民から「もらった」という発言があることから、おそらくおもちゃは無料配布されているものだと思うんですね。つまり、工場ですらお金を意識して働いていないということになります。さらに、カウントされているのは販売数ではなく製造数です。

すみっコから見たらやりがい搾取で合っているんですけれど、工場側は搾取の結果私腹を肥やしたわけではないんですね。単にやりがいの空回りになっていたという感じがします。では、どうしてそんなことになってしまったんでしょうか。

ポイントは、工場に併設されたおもちゃ売り場だと思います。このショップ、ちょくちょく画面に出てくるわりに誰も使わないんですよ。ショップというのは、来客を待ち受けるところです。でも客はそもそもここの存在を知りませんし、生産数が第一目標として運営されているので「客を迎えるショップ」がいらないんです。

おもちゃを供給するトラックは、無人なんですよね。客からのフィードバックや需要の把握ができるいわば営業的な、唯一客とふれあうところが無人なんです。だから町の惨状を把握するのにも時間がかかってしまいました。

工場では企画会議もありますが、すみっこたちはそれがどこの誰に対して届けられているおもちゃか知りません。誰のためにしている労働なのか?というのを把握していないんです。だからこそ「楽しい」で終わるし、全体の目的や目標が販売数の増加という形でしか設定できないので、労働が過酷化します。

ちなみにこの工場、昔はショップが工場の中にありました。つまり働いている工員はお客の顔が見えていましたし、会話可能な距離だったんです。「やりがい」「仕事の結果」「需要の把握」が目に届く範囲にあったんですよね。ところが工場の規模がでかくなるにつれてショップと工場が分断し、客の顔は見えなくなりました。その結果、需要もやりがいも分からなくなったのでしょう。

ですが、施設である以上「需要」がなくては稼働できません。そこで工場の需要は「工員の働く場所」になってしまいました。おもちゃを作るために働いているのではなく、働くためにおもちゃを作っているんですね。製造数増加を掲げる工場ですが、本当の願望は「働いている工員をつなぎとめること」。そこにこの工場の自己中心的な願望が見え隠れします。早い話が人から必要とされてちやほやされたいんです。

この点でも工場はすみっコぐらしの世界で珍しい住人といえます。すみっコは「かっこよくなりたい」「お母さんと暮らしたい」「おいしく食べられたい」「自分の仲間を見つけたい」など、基本的に自分の努力やアクションで叶えるタイプの夢を持っています。でも工場の「たくさんの工員に囲まれて必要とされたい」は他者からのアクションに強く依存しているんです。成功の可否を他者に頼るような、自分でコントロールできない夢や目標は立てると挫折しやすくなりますので、良くないんですよね…

物語の中で、とある機械が登場します。とんかつが入るとロゴマークの入ったニセとんかつがコピーされて増殖するというよく分からない機械なんですけれど、おもちゃの増産を狙うのであればそれを使ったほうが効率がいいはずなんです。優秀なしろくまをコピーすれば、作業はもっと捗るはずです。しかし何故かくま工場長は使用しませんでした。

一人一人生身のみんなが作業しているということに意味を見出す(手作り信仰)のであれば作業を機械化しないと思いますので、やはり工場は「本当に生きている」工員が欲しかったんだと思います。自分で作り出したぬいぐるみを働かせても、いわば自分のインスタ投稿に別アカウントでいいねとかコメントを付けているようなものですからね。

先程のとんかつの機械に関して「本物のとんかつはえびふらいのしっぽの嫌がることはしない」というナレーションがあります。「本物の友達は嫌がることをしない」んですね。ところが工場にとって人を繋ぎ止めておく方法は労働しかありませんでした。おそらく以前の従業員がいなくなってしまった理由もそこにあるのかもしれません。

ですが、工場がいくら頑張ってよい環境でホワイト企業になったとしても、労働以外の理由でも工員は離れる可能性があります。例えば「工場に使う時間を別のことに使い始めた」「工場で働くよりも幸せなものを見つけたから」などですね。

実は友人関係も似たようなところがあると思います。「友人とは共有できない趣味に没頭するようになった」「友人よりも家庭を優先するようになった」など、本人が何も悪くなくても友人関係が疎遠になることはあります。

工場が幸せになるには自分でコントロールできる、他者に依存しない夢をもつことが大事なんですけれど、ここが工場の不幸なところかもしれませんね。工場が自分でコントロールできる目標は、生産数なんです。だから自分で自分を幸せにすることが難しくなります。

まとめると、工場は強い承認欲求はあるが需要を把握していない単純生産しかできない上、自分の幸せは他人のアクションに強く依存しているのです。そう考えると、ブラック企業の象徴とも言われる工場が「かわいそうな奴」に見えてくるように思います。

客の顔が見えていないので必要とされているかどうかも分からず、自分の承認欲求を満たすのは工員のみ。そしてその工員を繋ぎ止めるためには生産数をあげて工員を苦しめるしかない。そのため人が寄り付かなくなる。嫌な奴に思われがちの工場ですが、工場である以上、人の暖かさや友情とは疎遠になってしまう運命でもあります。

※やはり前回同様の注意となってしまいますが、ナレーションの存在については触れておくべきかと思うのでもう一度説明しておきます。

すみっコたちには台詞がありません。正確に言うと、台詞の代わりにキャラクターの周辺に手書き字幕みたいなものが出ます。展開は全てナレーションが説明を行うのですが、時折すみっコの行動にツッコミをしたりするので、苦手な人は苦手かな、という印象があります。

また、今回のナレーションは声が大きい、存在感が出過ぎといった意見も散見されますので、合わない人は合わないかもしれません。自分はあまり気にならなかったです。

今回のすみっコぐらしの映画は、個人的には期待外れの印象が強いです。

第一弾が「大人が見ても感動する!」という評価であったせいか、弾を重ねるごとに大人ウケに寄っていっている気がします。もちろん、子供も楽しんでいるので「子供の頃見た時と印象が違う!」という2回目の楽しみを与えてくれるポテンシャルはありますが、その一方で本来のすみっコの世界観を壊しているというマイナス面もありましたね。

ただ、「大人でないと分からない要素が出てくる」ということ自体に関しては、上記の通り将来的に2回めの新鮮さを与えてくれる可能性もあると思うので一様に悪いということもないと思います。派手なアクションや攻撃的なキャラの投入も、ストーリーによっては名作につながっていくかもしれません。

ですが、自分が期待外れだと思ったのはそこではないんです。大人が見れば労働問題を感じ、子供が見れば「ものを大事にしよう!」という教訓が得られるというのがおおまかなテーマっぽい感じはするんですけれど、子供側のテーマが薄っぺらいんです…

おもちゃ工場というフィールドで展開された今回の映画ですが、「ものを大事にしよう」というテーマの中で工場での作業が最終的に機械化していったのはいいアイデアだと思いました。もしすみっコが手作りでおもちゃを作っていたとしたら、供給過多とはいえそれが「いらない」って言われるの悲しいじゃないですか。

工場で機械が大量生産したものであるからこそ、「多すぎる!もういらない!」って気軽に言えるんじゃないでしょうか。その感覚を、見ている生身の人間が何の疑いもなく持っているんですよね。大量生産されたものに価値を感じないというのは、それに特別な価値がない、どこにでもある、誰でも持っている無機質なものと思ってしまうからでしょうし、実際そうです。

でもそんな中で、シロクマは大量生産されたぬいぐるみを大事にしていました。象徴的なのがお母さんがつけてくれたボタンですが、ようはぬいぐるみ本体に付属している思い出が大事なんです。

工場の奥の部屋をくま工場長は封印しました。昔の思い出は、「必要とされなくなって捨てられた」という悲しい思い出ですから、その過去をしまいこみ「新しい人生」に入ろうとしたんだと思います。ですがそれは同時に「客の子供たちの笑顔の思い出」をも封印してしまったんです。だから誰のために、何のためにしていたのかということが分からなくなってしまったんでしょうね。

ちなみに、この映画を観終わった最初の感想が誰のため、何のためにあるの?でした。

すみっコが働くという舞台設定や労働の辛さが描かれたことにより、大人に寄せすぎたように感じます。すみっコはそもそも大人が見ても学びがあったり感動したりというのが売りの1つであると思いますが、労働におけるトラブル(客と揉めるとか、ミスが発覚するとか、営業が大変とか、作るのが大変とか)にすみっコ各々がそれぞれ直面するのではなく、働き方に関するトラブルに焦点が当たっているんです。

だから縫製のシロクマ以外はほぼ適正が関係なく、すみっコが弱者として十把一絡げになっていて個性が感じられないように思います。しかも最終的に機械化するのでなおさらです。この「特定のすみっコにしかスポットライトが当たっていない」という意見は実は前作の頃からちょいちょい見かけていたんですけれど、今回はそれがさらに酷くなった感じです。

内容も、仕事とはどういうものかとか、何かを作る楽しみや大変さとかではなく、「何のために働いているのか」「働くことにより払う犠牲」みたいな話になっているので、大人を狙いすぎている気がするんです。「仕事」が何かもよく分かっていない子供にそんな話をするのが、「基礎も知らないのに応用を教える」みたいに感じられました。

でも1番がっかりしたのは、子供相手のテーマが「古いものでも、役に立たないようなものでも大事にしよう!」という一般論みたいな薄さだったことです。ものを大事にするという話であれば、もっとそこに焦点を当てた話ができるじゃないですか…

例えば、大事にしていたもの(それこそシロクマのぬいぐるみ)を実家で処分されてしまったとか、親戚の子に譲渡されてしまったとか、いらないと思って捨てたけどやっぱりいる!となったとか、ふと思い出して探したらいつの間にかなくしてしまっていたとか、色んなストーリーができたんじゃないかなと思うんです。成長していく上で、子供は必ず「長年親しんだものを手放すかどうか」という岐路に立たされる瞬間があります。

そういった答えのない問題にどういうアクションをとるのかを学ぶ話でもいいはずなのに、肝心の子供向けの箇所のパンチが薄いんです。シロクマは昔からぬいぐるみを大事にしていたよ、そしてそれは大量生産されたぬいぐるみだったよ、個人的な価値でぬいぐるみを大事にしているよ、という良い子のお手本であるだけで、学びや感動がないんですよね…

そのわりに、数字をつけられることによる格差や労働過多、フィードバックなく生産しつづけることの無意味さ、労働環境、やりがい搾取など、おおよそ低年齢層の子供に理解できない要素ばっかり詰め込まれていることが、大人への媚びに見えてしまうんです。

自分のような「すみっコの映画って意外といいらしいよ!」ということを知って、「子供向け映画の中にあらわれる素朴な郷愁、大人の忘れてしまった大事なことで感動したい!」という層を大きく狙いすぎている気がするんですよね。お金を多く落とすのは大人でしょうが、あくまですみっコの映画は子供のためのものだと思うんです。「感動したい!」と言う大人は子供の世界にお邪魔させてもらってるようなもんじゃないですか。

おもちゃは何のため、誰のためにあるのか。
すみっコの映画は何のため、誰のためにあるのか、と感じてしまいました。

ちょっと否定的な感想が多くなってしまいましたので、個人的に細々と感じた良かったところの感想をこっちにまとめておこうと思います。

まず、ストーリーとしては微妙と述べた今作なんですけれど、動くすみっコを何十分も見られるという点においては確実にみる価値があります。可愛い!癒やされる!というのはもちろんなんですけれど、内気なキャラが多いので顔や視線の動きとかにこだわりがあるんですよね。そこに結構感心します。

ちなみにすみっコが動くときゅるんという音がすることは知っていましたが、ぴきゃーっていう鳴き声は初めて聞いた気がします(笑)。

そんでやっぱり、背景の綿密さがいいんですよ。機材のデザインやリアルな倉庫のレイアウト、そして機械のサビとか、妙に使用感のリアルさを感じるんですよね。すみっコの世界観のこういうところがすごく好きなんです。少しも手を抜いてない作画というか。

また、今回のお話で良かったなと感じたのは、シロクマが序盤で紛失したボタンが結局見つからなかったところです。大事なものってずっと持つことはできるんですけれど、破損してしまったり、なくしてしまうこともあるんですね。でも、代わりの物が代わりの思い出と一緒に心の隙間を埋めてくれるんです。

このシーンめちゃくちゃいいところだったのに、シロクマはボタンをなくしたことを大してショックに思っている感じではないし、代わりのものを手に入れる時もあっさりしていたんです。ここ頑張ってくれよ!と思ってしまうくらいにはいい展開でした。

そういえば今回はエンディングの音楽も賛否両論だったそうでして、すみっコディスコというポップな曲です。素敵という人もいれば、すみっコに合わないという人もいますね。自分はあんま合わないとは思いましたが、酷評するほどではないと思います!でもそもそも、このアニメのメイン顧客層であろう子供たちがディスコを知っているのか…?

ですがこれに関してもストーリーやカーアクションに関してもそうなんですけれど、こんだけ前回から様変わりしているということから、もしかすると監督側に何らかの圧力がかかった可能性もある気がして、手放しに監督を批判しようとは思わないんですよね…

また、各キャラにスポットライトを当てるというのも、そういう方向性の問題かもしれません。今回はこのキャラ!みたいな。でもそれにしてもその他のすみっコの存在感が全然なのはちょっと…といったところではあります。

そして工場としてはもう生きていけなくなった工場ですが…最後に映画館に生まれかわりましたね。あれはいい展開だと思いました!すみっコの世界では、おもちゃが供給過多になってしまいます。ですが、年齢性別を問わず利用者のいる映画館として生きていくという選択肢を取ることにより、ほぼ常に需要が発生するわけです。

映画は古いものでもずっと名作になっているものもあります。古くても大事にされているものがたくさんあるんですね。かつ、客は映画館の中に入ります。つまり客との対面が可能であるので映画館は寂しさを感じなくなるし、どういうものがウケがいいのかというフィードバックを得られるようにもなるんです。だから客から遠ざかって需要の把握ができないという二轍を踏むことがなくなるんです。

今回の映画では個人的にあまり好きではないなと思う箇所が大きかったので全体としては高評価とは言い難いんですけれど、やはり感動したという大人もたくさんいますし、楽しんだという子供もたくさんいます。次回はどんな展開の映画になるのか楽しみですね。

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