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己に騙されるな!『バイアス辞典』情報文化研究所

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最初に質問があります。

以下は、リンダのプロフィールです。

リンダは31歳、独身で、積極的に発言する非常に聡明な人です。大学では哲学を専攻し、学生時代には差別や社会正義の問題に関心を持っていました。また、反核デモに参加していました。現在のリンダについて推測する場合、(A)と(B)のどちらの可能性が高いと思いますか?

A.リンダは銀行員である。
B.リンダは銀行員で、フェミニスト運動もしている。池田まさみ・森津太子・高比良美詠子・宮本康司 (2020). 連言錯誤 錯思コレクション100

バイアスってそもそもなんやねん

バイアスという言葉は一時期流行ったので、実は結構知っている人もいるんじゃないかと思います。分かりやすくいうと、「思い込み」のことですね。悪い感じに聞こえますが、人間なら大抵備わっている基礎的な機能なので、あったからといって別に心配する必要はありません。

人間の脳は何か物事が起きた時に、自分が納得できるようにバランスを取ろうとします。本来は自分の心や体を守るための仕組みですが、知らず知らずのうちに耳障りの良い情報だけを選択したり、都合の悪い情報に蓋をしてしまう危険性もあるのです。

この本で紹介されている認知バイアスとは、偏見や先入観などを指します。誰もが無意識のうちに持っているそのバイアスを「60の心のクセ」として紹介し、「どうして自分はそう考えるのか」を考えさせてくれる本です。

さっきのこたえ

冒頭で質問があったと思いますが、その答えは…

A.銀行の窓口係です。

リンダの経歴からフェミニスト運動等に関心があって参加しているイメージを抱いてしまいがちですが、銀行の窓口係かつフェミニストであるという2つの条件が重なる可能性よりも、単に銀行の窓口係であるという可能性の方が高いのです。

この質問ですが、85%の人は②を選択するそうです。リンダの個人的な特徴に着目して、自分の頭の中で「リンダってこういう子だよね」と思い込んでしまうのです。これは連言錯誤と呼ばれています。AかつBと、単にAであるの場合、何故かAかつBの方が確立が高いと思ってしまうのです。

人間の脳は怖すぎる

心理学の本とか読んでいるとちょいちょい出てくる話ではあるんですが、人間の脳って怖いくらい「自分のことを納得させよう」とするんですよ。だからブラック企業で働く人なんかは賃金が低く労働が過酷であるほど、「仕事が面白いから自分は頑張っているのだ」という思い込みをしてしまうのです。

でもそのくらいは実はまだ可愛い方でして、なんていう本で読んだやつだったか忘れてしまったんですが、もっと怖い実験結果もあるんですよ(バイアス事典に書いてある実験ではないです)。

被験者たちに、何の罪もない人に電気を流すところを見せ続ける、という実験があります。

で、これどうなるかというと、見ている人たちの脳は「何の罪もない人が電気を流されている」という状況に納得できず「あの人は悪い人に違いない」と思うようになるのです。

バイアスにかかった瞬間を見られる動画

バイアス事典では、面白い動画が紹介されています。
↓このシモンズさんという方が1998年に行った実験です。

お分かりいただけただろうか…
実は以下のような実験である。

1.仕掛け人が通りすがりの人に道を聞く
2.話している時に、大きな板材を運搬している人たちが二人の間を通る
3.この時、仕掛け人が別の仕掛け人に入れかわる
4.話していた人が入れ替わっていることに通りすがりの人は気付くのか?!

これ半分くらいの被験者が気付かないそうです。字面で実験内容を見ると「そんなわけないじゃん」と思ってしまいますが、実際に気付かない人を動画で見ると「ありえそう」と思えてしまう不思議があります。

バイアスは悪いもの?

確かに、バイアスがかかりすぎると他者との関係性に問題が起きたり、自身にストレスがかかる等の問題が発生することもあります。

しかし、バイアスの中には自分の心身を守るために必要なものも存在しているのです。周りになんとなく合わせてしまう「同調バイアス」があれば有事の際に事件や危険を察することもできます。

実力のない人が自身を過大評価する「ダニング・クルーガー効果」があれば、緊張を感じずに自信満々で新しい仕事に挑戦することもできます。

大事なのは、偏った考え方をしてしまう人をすぐに嫌な奴だと人格否定するのではなく、「この人にはバイアスがかかっているのかもしれない」と一度考えてみること、そして「自分自身にも何かのバイアスがかかってしまっているのでは?」という可能性を考慮をすることなのです。

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