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『ローマの休日』感想レビュー!お姫様と一般人の、甘く切ない不朽のラブロマンス映画

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映画情報

邦題:ローマの休日
原題:Roman Holiday
公開年及び国:アメリカ(1953年)
上映時間:118分
監督:ウィリアム・ワイラー(原案はダルトン・トランボ)

<キャスト>
アン王女(姫):オードリー・ヘップバーン
ジョー・ブラッドレー(記者):グレゴリー・ペック
アーヴィング・ラドビッチ(カメラマン):エディ・アルバート
大使:ハーコート・ウィリアムズ
伯爵夫人:マーガレット・ローリングス
将軍:トゥリオ・カルミナティ
マリオ・デラーニ(美容師):パオロ・カルリーニ

<概要>
とある欧州の国の王女アンは、スケジュールも台詞も下着ですら全てが生まれた時から決められている生活に窮屈さを感じていた。そんな折、ローマの若者達の賑わいに羨望した王女は大使館から脱走する。偶然出会った親切な男ジョーと自由を謳歌するというまるで恋物語のような一日を過ごすことになるが、実はこのジョーは王女のゴシップ記事を狙う記者の一人であった……

こんな人にはおすすめ!&おすすめしない!

<こんな人におすすめ>
・オードリー・ヘップバーンが好き
・身分差ものの恋物語が好き
・可愛いお姫様が好き
・恋愛映画の金字塔を見てみたい
・ただのラブコメじゃなくて、ほろ苦さもある恋愛が好き

<こんな人にはおすすめしない>
・主人公カップルが幸せに結ばれるハッピーエンドでないと嫌
・白黒映画は苦手
・昔の映画の演出技術の低さが苦手
・ベタな話は好きじゃない

評価

【個人的な評価】

ストーリー ★★★★★★★★★★

画面映え  ★★★★★★★★★★

ユニーク  ★★★★★★★★★★

オードリー・ヘップバーンといえばこの映画!ちょっと世間知らずで可愛いだけのお姫様ではなく、気品と強い意志に溢れた姿も見せてくれます。ただの身分差ラブコメディに終わらず、お姫様、そしてちょい悪ヒーローの成長や変化も見どころ。名言や名シーンも多い、まさに恋愛映画の金字塔です。

【ネットなどでのおおよその評判】

オードリー・ヘップバーンの愛らしさと王女のキャラがとてもマッチしている!
笑えるシーンもあるが、切ないシーンも秀逸

何十年も前の映画なので演出や音楽が物足りない
話がベタだ

などの意見がありますが、圧倒的に「素晴らしい!」という評価が多い映画です。 

あらすじ

アン王女は、ロンドン、アムステルダム、パリ、ローマと欧州諸国を15分刻みのスケジュールで親善のための周遊をしている王女様です。生まれた時から窮屈な生活を強いられていたアン王女ですが、精神が限界を迎えておりノイローゼ状態でした。そして遂に「数時間だけ…」と思って脱走するところから物語は始まります。

この映画はアンがメインの物語ではありますが、ヒーローとして新聞記者のジョーが登場します。彼はニューヨークから左遷されてきた記者で、キッチンもない狭っ苦しいワンルームに住んで家賃滞納もしているとかいうしがないダメ男です。

脱走したアン王女が公園のベンチで爆睡しているところを偶然保護した彼ですが、翌日職場で「アン王女が病気?!」みたいな新聞を見て、自宅でグースカ寝ているお嬢さんが実はその王女様であることを知りました。そのことを知っているのは自分だけです。

彼女に観光案内という名の密着取材をすれば、王女のプライベートというとんでもない独占記事が書けます。善人を装った彼は友人のカメラマン、アーヴィングを呼び出し、王女とローマの町で過ごす楽しい1日を全て隠しカメラで撮影させました。

しかし、無邪気に観光を楽しみながらも時折苦悩を見せるアン王女にジョーは心揺すぶられます。彼女は一国の王女様です。駆け落ちなんてできるわけがないし、それどころか明日には彼女と過ごした大事な思い出を、二度と来ないであろう一日を、スクープとして売らなければならないのです。

見どころ① 王女様との破天荒なデート!

ローマの休日といえば、デートのシーンがめちゃくちゃ有名ですね!ですが、実はアン王女が一人で町をうろうろするシーンもあるんですよ。買い物をしたり、ジェラートを食べたり、なんと思い切ったイメチェンをしたりします…!未知の生活に触れる王女のうきうきな姿は可愛らしいです。他にもところどころで王族の感覚独特の姫様ボケみたいなのがあるので、ほんとに微笑ましいですよ。さて、ジョーと合流してからだと三つほど有名なデートシーンがありますね

1.バイクで二人乗り…実は呑気なデートのカットではない。

ジョーが運転するバイクの後ろにアン王女が乗っている、あるいはその逆のシーン。ローマの休日というと、観たことない方でも大体このシーンを思い浮かべるかと思います。一時期、アマプラかなんかのCMで一瞬流れていたシーンなんですよ。ところであのシーン、二人でのんびり町中をデートしていたわけではないのをご存じだろうか。

実はジョーが運転しているシーンは、二人乗りを警察に咎められる直前のシーン
アン王女が運転しているシーンは、その後に彼女がスクーターを暴走させたシーンなんです!

当然王女はスクーターなんて乗り方知らないですから、すごい危険運転を始めます。慌てて止めようと飛び乗り、頑張るジョー。逆にテンションマックスで大笑いの王女。すると当然なんですが、次々警察が現れて追われまくります。

捕まって取り調べを受ける三人(アーヴィングも捕まってます)でしたが、嘘をついて難を逃れるのが得意なジョーがうまいこと素敵な嘘をついてくれたおかげでお咎めはなく、なんと拍手喝采されながら警察署を後にすることができました。

2.真実の口のシーン、嘘をついているのは…

ローマにある真実の口に二人がそれぞれ手を入れる、というシーンがあります。ジョー役のグレゴリー・ペックがアドリブをしたことで有名ですね。本当であればジョーもアンも噛まれないはずだったのですが、台本と違ってジョーが真実の口に噛まれてしまいます。アン王女ことオードリーが大パニックになってグレゴリーの手を引き抜こうとするという微笑ましいシーンですよ!

ですがこのシーン、一般人であると嘘をついているアン王女、記者ということを隠すジョーが真実の口に挑んでいるシーンでもあります。二人共嘘をついているわけですから、妙な緊張が流れましたね…オードリーの可愛さとグレゴリーの機転と共に、アン王女とジョーの心境も味わってみて下さい。

3.王女大暴れの船上パーティー

これが一番の派手なところですね、船上パーティーに来たらアン王女を探していたシークレットサービスに見つかっちゃって大乱闘になるというシーンです。コミカル度が高いと同時にアクションも音楽も、ピンチ度もマックスの盛り上がりを見せます。

派手にイメチェンしたり、スクーターで暴れたりしていたアン王女ですが、日中のそれを上回るレベルで大暴れしているので、是非ともこれは実際に観て欲しいところ。めちゃくちゃ楽しいです!

だからこそ、この後のシーンの切なさが強調されるんでしょうね。

見どころ② 序盤と終盤で全然顔が違うアン王女

是非、序盤のアン王女と終盤のアン王女の表情や立ち振る舞いに意識して観てください。

一番最初に出てくるアン王女のシーンって、すごく収まりが悪いんですよ。どういうことかというと、20歳くらいの若い王女を50過ぎてるであろう将軍がエスコートして舞踏会に入ってきます。着ているドレスも古臭いデザインなんですね。それでダンスを踊る相手も政府の要人ばっかりなんでおじいさんとかおっさんばっかりなんです。

その上、アン王女のしていることもただただ定型文の挨拶を読み上げるだけ。だからこそ序盤のアン王女は、王女様というものの一般イメージから華やかさを欠くんです。

でも別に王女業務に退屈しているのは見ている側だけではないんですね。なんと、本人も飽きています! そんな子供っぽさがめちゃくちゃ可愛い一方で、『大人の都合で無理矢理ドレスを着せられた子供のお姫様』という雰囲気が強いんです。

だからアン王女は自分の人生が嫌いでした。持っているものは下着ですら、全部嫌いなんです。着る服も、スピーチで話す内容も、このパターンの時にはこれ、と全部マニュアルがあります。小さい頃はそれが普通でしたが、大きくなって「外の世界」とか「同じ年頃の若者」のことを知ってしまって、自分がいかに人生を選択できてないかに気付いてしまったんでしょうね。

脱走というのもいかにも子供らしい発想ではありますが、アン王女は翌朝不安になるんです。「飛び出したワーイ!」じゃないところが、むしろ幼く感じます。そこでジョーに誘われ一日好き放題遊ぶ中で長年の望みを叶えながらも、アン王女はそれが永遠ではないことに気付いて成長していくのです。

そして大使館に戻ったアン王女ですが、明らかに今までと顔つきが違いました。脱走する時にはその影にさえ怯えていた将軍にさえ毅然と言い返します。王女という立場は変えられませんが、今まで言われるがままに生きてきたその人生を、自分の意志で「選んだ」のです。

序盤と終盤、さらに言うと中盤でも、本当に全然顔が違います。初めの頃は十代っぽかった幼い表情や所作が凛としたものになるのです。化粧の仕方も関係してきてると思うのですが、顔の傾きや口元の緊張が隠せず、目が伏せがちだった序盤の幼い王女、眉が濃く、髪型もラフで目の周りの化粧もしっかり濃い今時の若者アーニャ、そして上品で意志の強さを見せつける終盤の王女。三つの顔がありました。

見どころ③ 「人生はいつも不自由だ」

Well, life isn’t always what one likes…(人生はいつも不自由だ)

©1953 Dalton Trumbo,William Wyler

これは、デートを終えてアン王女と家に戻って来たジョーの台詞です。帰ってきて、ご飯でも作ろうかとアンが言うんです。これも彼女のやりたかった憧れの一つなんだと思うのですが、ジョーの家にはキッチンはありませんでした。それを不自由と言うと、ジョーから上記のように返答されます。

買い物、美容室、ジェラート、観光、パーティー。今までは、アンのやりたいことは町の中に都合よくありました。船上パーティーなんかそうです、偶然、都合よくその日にパーティーがあったんです。でも、最後の最後で都合よくキッチンがなかったのです

二人は素敵な一日を過ごしましたが、そもそもこのデートって初めから絶対に成就しない恋愛なんですね。全てから逃げ出した先で出会ったカッコイイ男性と恋して、駆け落ちして一緒に暮らすという夢物語は通用しないんです。実はデートの中でアン王女はそれに気付いているような言葉を既に口にしていたりもします。

何もかもが上手くいくことはないからこそ、ネガティブなところも含めて自分の人生を真剣に見つめなければなりません。アン王女はジョーの言葉に対して「その通りだ」と答えることができるほどの大人になっていました。

「どうせこういう人生だから」という妥協ではなく、「不自由なのは知っているが立ち向かう」という強さが、この後のお別れシーンで現れます。少女の面影を残した軽やかな足取りながらも、意志の強さを見せるアン王女の後ろ姿とお別れの言葉は、非常に印象的です。

感想 ただの身分差ラブストーリーではない

完全なる善人が王女に美しい思い出を演出したのではなく、どこにでもいそうなちょっと悪い奴が、初めは悪い目的を持って近付いた、というのがいいところなんですね。

さて、上記でアン王女の変化については述べていたと思いますが、実はジョーも大きく変わりました。顕著なのが、船上パーティーのシーンですね。美容師のマリオと対照的に描かれている気がします。シークレットサービスが出てきたら大抵の一般人はどうしようもないんですが、それでもジョーは抗いました。

もうスクープはしっかり写真に残ってますから、素知らぬふりをしておけばここで王女は仕方ない理由で退場してくれて、罪悪感と向き合わずにうまいこと一連のことは終わっていたはずなんです。それをわざわざ自分から首突っ込んだんですね。

ジョーは、公の場では世界平和とか無難なことしか口にしない王女の個人的な願い事をスクープにしてやろうとしていたわけですが、その願いというのがスクープにして人々の好奇にさらしていいようなものではないのを知ってしまっていたことも関係あるのかもしれません。

そしてこの映画の素晴らしさといえば、何と言ってもクライマックスの美しさ

劇中で「so happy」というセリフがあります。アンが最初に公園で寝てた時に言ってたうわごとがso happy、そしてクライマックスの別れの台詞もso happyなんですよ…出会いと別れの言葉が同じなんです。

最後に満面の笑みを見せるアンですが、一瞬だけ泣きそうになります。
この演技がすごいんです。強さと美しさで満ちた、笑みなんです

この映画でオードリー・ヘップバーンに惚れたといっても過言ではありません。自分はもう何回も観ています。DVD持ってます。それくらいに何回も見直したい、ことあるごとに味わいたい素敵な映画です

変えられない運命というものはあります。不自由というのは必ず誰にでも発生し、都合よく「ない」ことが多々あります。しかしそれを「人生に押し付けられた」として捉えるのか、「その中で自分で選んだことがある」と自覚を持つのかにより、歩み方は変わるのではないでしょうか。

自分が選び、自分が考えた自分の人生である。だから、堂々と歩くことができる。何か勲章や財物がなければならない、何か幸運や功績がなければならない、などいうことはなく、不都合で不自由な中、肩で風を切って、諦めや羨望に惑う悲しい自分に負けないこと、それこそが強く生きていくことであり、運命に抗う唯一の方法なのかもしれませんね。

コラム 

以下では鑑賞中に気になったちょっとしたネタなどをご紹介しています。

気になった英単語

英単語

screwball (奇人)

アン王女がジョーの家に上がり込んできた時に言われた台詞ですね。何のことなんだろうと思ったら、奇人とかおかしなやつ!みたいな意味があるそうです。他にも作中、キーワードとなる言葉にはringerとかもあったりしますので、是非字幕英語音声で観てみてください。

ところで、ローマの休日は英語の勉強教材があるんですよ!ラダーシリーズなんかは自分も持っております。そんなに難しくないし、映画を観てから読むと頭に入りやすくていいですよ!

これは本当におすすめなので、機会があったら詳しくご紹介いたします。

作中に登場する詩

作中には色んな詩が登場します。その中には脚本家自身が書いた詩も…

If I were dead and buried and I heard

your voice beneath the sod my heart of dust would still rejoice.

(例え死しても地からそなたの声を聞く。この心が土と化しても喜びに満ちるであろう)

©1953 Dalton Trumbo

何でこの詩がここで言われたのかは分かりませんが、死んだ後でないと会えないという状況を思い起こさせます。実際、アンとジョーもそうなるであろう結末なのでそれを想起させるためのものなのかもしれません。

他にも、パーシー・ビッシュ・シェリーのアレトゥーサという詩も出てきます。
(同世代の詩人はバイロン、キーツなどがいるそうです)

I refuse a* rose from a couch of snows in the Aquasaromian* Mountains. Keats.

https://plaza.rakuten.co.jp/sakisakisf/diary/201706130001/

この詩は頑張って解釈を考えたんですが、広がり過ぎて収拾がつかなくなったので、気になった方は是非、以下のサイトさんで確認してみてください。

https://plaza.rakuten.co.jp/sakisakisf/diary/201706130001/

実はあのジェラート、日本でも食べられます!

アン王女がスペイン広場で食べていたのは、ジョリッティという有名な会社のジェラート。
日本にも支店がありますよ!

Giolitti Japan | ジョリッティジャパン 公式サイト
創業者ジュゼッペ・ジョリッティ氏によって1900年から始まった「Giolitti(ジョリッティ)」は、ローマの老舗ジェラートブランド。美味しさや質の高さが市民の間で話題になり、イタリア王室御用達にもなりました。創業当時から続く伝統のレシピで...

因みに、今はスペイン広場で座ってものを食べると罰金になるので気を付けてください。

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『ローマの休日』DVD

白黒映画のローマの休日ですが、実は最近になってフルカラー版が出ているのをご存じですか?
買ったらまたレビューしようと思います。(以下はモノクロ版)

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